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MERS、エボラ、デング熱も 「人獣共通感染症」ってどんな病気?どう防ぐ?
情報掲載日 2015/07/21
 韓国に打撃を与えた中東呼吸器症候群、通称「MERS(マーズ)」。終息の兆しが見えてきましたが、今回の流行が収まっても、感染症の脅威がなくなるわけではありません。

 MERSウイルスの感染源は、ヒトコブラクダの可柏ォがあると報じられました。近年、人にとって新たな感染症が話題になると、必ずといって良いほど動物との関連が指摘されます。例えば、SARS(重症急性呼吸器症候群:サーズ)ではハクビシンというジャコウネコ科のイタチに似た動物、鳥インフルエンザではアヒルやカモなどの水鳥類やニワトリ、エボラ出血熱ではサルといった動物が関わっているとされました。


 そこで今回は獣医学の視点から、MERSをはじめとした動物の関わる感染症について紹介していきます。

人獣共通感染症とは?
 ウイルスや細菌などの病原体には、それぞれ宿主となる生物が存在します。宿主生物は1種の場合もあれば、複数の場合もあります。その中で、脊椎動物(哺乳類や鳥など背骨をもつ動物)と人との間で自然に伝播するすべての疾病を、「人獣共通感染症」といいます。

 少し細かいですが、宿主となる生物の体内に病原体が侵入し、定着、増殖するまでの過程を「感染」、感染を受けた生物の体に病的な変化が現れる段階を「発症(発病)」といいます。宿主の中には、感染しても発病しないまま、病原体を体内にもち続ける動物がいます。また、感染してから発病までのタイムラグ(潜伏期間)の間や、回復したあとでも体内に病原体が残り、まわりへの感染源になることもあります。
 
 このように、元気であるにもかかわらず、体内には病原体をもち、咳や便、体液などを通して病原体を排出する動物を「キャリアー」とよびます。例えばエボラ出血熱では、コウモリがキャリアーとなり、サルや人に感染を拡げているとされます。
 
 人獣共通感染症の場合、キャリアーも含めた宿主に多様な動物が含まれるという点から、コントロールをより困難にしています。どういうことか、考えていきましょう。

人獣共通感染症の蘭hは困難?
 まず、渡り鳥をはじめ、野生動物の移動を完全に制御することは困難です。さらに、人から人だけの感染に比べ、感染経路はより複雑で多様といえます。人同士ではあまり想定しなくてもよい経路、つまり食物として摂取することや、かみ傷や引っ掻き傷からの感染も考えなくてはいけません。

 新しい感染症が確認され、人獣共通感染症であると疑われても、多くの場合、感染源の動物が特定されるまでには時間がかかります。さらに感染源が特定できても、その動物の数や分布域、活動状況を把握するのは至難の業です。人獣共通感染症は、原因の特定からコントロールに至るまで、非常に複雑だということです。

 加えて重要なのが、「ベクター」の存在です。昨夏話題となったデング熱では、ヒトスジシマカ(蚊)が感染に関わっています。このように病原体の運び屋となる蚊やダニ、ノミといった節足動物をベクターと呼び、この存在が感染を拡げることもあります。


 ちなみにデング熱ウイルスも、サルと人に感染することがわかっており、人獣共通感染症といえますが、日本では人と蚊の間でのみ、感染拡大が起こりました。

重要な感染症の多くが人獣共通感染症
 日本では、感染力が強く症状が深刻になる可柏ォがある感染症について、「感染症法」(感染症の蘭h及び感染症の患者に対する医療に関する法律)で対処方法を定めています。この法律で指定される感染症の多くは、人獣共通感染症にあたります。例えば最もリスクの高い「一類感染症」には、エボラ出血熱やペストなど7つの感染症が指定され、そのうち6つは人獣共通感染症です。続く二類感染症では、6つのうち4つが人獣共通感染症で、SARSや鳥インフルエンザ(H5N1型)が含まれています。

 世界には約800種の人獣共通感染症があるといわれ、世界保健機関(WHO)では、その中でも約200種を重要と見なしています。そして人獣共通感染症の種類は、年々、増加傾向にあります。

今、向き合うべきこと
 なぜ、人獣共通感染症は増加傾向にあるのでしょう? 現代の私たちは国際交流のさかんな時代に生きています。感染症もさまざまな経路を通じて、国境を越えた感染拡大のリスクを持つようになりました。医療技術の進歩により、感染症は減っていくと期待される一方、活発化する人間活動が感染症の拡大を招いているというのも事実です。

 多くの場合、病原体とその宿主や運び屋となる動物は、本来限られた地域に生息しています。ところが、人間活動を通して、これらが世界各地に拡散する機会を増やしています。例えば、野生動物を娯楽などのために売買して、本来の生息地から人間社会へもち出すということが行われています。一方で熱帯林の開発など、人間が未開の地に踏み入る機会も増えています。人と動物が、もとのまま棲み分けをしていたなら、病原体が人の間で流行することはなかったかも知れません。人間活動の影響が、私たち自身に返ってきているとも考えられるのです。

感染症の流行、どうやって防ぐ?
 MERS、鳥インフルエンザといった新しい感染症に対し、日本ではどのような対策を講じているのでしょうか?

 よく聞くのは「水際での防疫」という言葉ではないでしょうか。これは「水際(海)から先の国土には、病原体をもち込ませない」という蘭h対策です。実際には潜伏期間があったりするので 、感染源の持ち込みを完全に防ぐことは困難です。しかし、海に囲まれた日本では、水際対策が一定の効果を示す例もあります。また、一度侵入した感染源を封じ込めて除去し、それ以上の侵入を防ぐことで、撲滅を目指すこともできます。地理的に孤立した島国として、感染症対策の強みがあるわけです。

 かつて日本での撲滅に成功した感染症の1つが、狂犬病です。狂犬病も人獣共通感染症にあたります。世界では毎年3万5000人から5万人が犠牲になっていますが、日本は1957年以降発生がなく、撲滅に成功した「清浄国」となりました。


医療も衛生状態も整っている欧米諸国でも、清浄国ではない国が多いことがわかります。一方で、清浄国には、オーストラリアやイギリスなど、日本と同じように周囲を海で囲まれた国が多いことが見てとれます。

 清浄国であり続けるには、再度、病原体が持ち込まれることを防ぐことが重要です。外国からペットも含めた動物をもち込む際は、国ごとに指定された検疫(審査)を受けることになります。その動物が感染症にかかっていないか、また潜伏感染(感染はしているが、症状が出る前の段階)の状態にないかを見極めます。さらに、国ごとに定められた検査や証明書の発行が必要になります。労力はかかりますが、狂犬病の侵入を防ぐ最も有効な手段となっています。

 国内では「狂犬病蘭h法」という法律により、犬の登録、蘭h注射、必要な場合の保護と捕獲も義務づけられています。飼い主として、責任をもって防疫に努める必要もあるわけです。日本が清浄国であり続けるために、このような措置がとられているのです。

 今回は獣医師の立場から、昨今の感染症の脅威を人獣共通感染症という視点で見てみました。獣医師というと「ペットのお医者さん」のイメージがありますが、獣医師の任務は「動物に関する保健衛生の向上及び畜産業の発達をはかり、あわせて公衆衛生の向上に寄与すること」(獣医師法第 1条より)。つまり、人の衛生的で豊かな暮らしに寄与することなのです。ですから、家畜や魚、ミツバチなどの衛生管理も担当します。そして人獣共通感染症のコントロールも重要な使命なのです。

 MERSなどの新しい感染症のニュースを読み解く際、ここに挙げた情報も念頭に、世界の動向を見てもらえたらと思います。そして私たちの生活を豊かにしてくれるペットや、地球上のさまざまな動物たちと、人間はどのように関わっていけばよいのか、考えるきっかけとなれば幸いです。


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