2021/02/05
脾臓の悪性リンパ腫の破裂による、出血性ショックで輸血しながら緊急手術で脾臓摘出術と肝臓バイオプシーをして救命したキャバリアさん。確定診断名は、「B細胞性高悪性度悪性リンパ腫ステージ3」でした。術後2週間後から抗がん剤療法が始まりました。
大きな副作用もなく無事に抗がん剤療法を終了したキャバリアさん。
手術から、4年目です。悪性リンパ腫の4年生存は当院でも最高ですし、世界の生存日数でもNO1です。
そしてしばらくして今度は持病の心臓病の僧房弁閉鎖不全症が進行して、肺水腫をおこし、心臓性ショックで入院しました。
緊急事態です。内科療法と支持療法を駆使して回復し、無事退院できました。ACVIM=アメリカ獣医内科学会の臨床ステージCです。
4種類の薬と心臓病食を投与し、運動制限で散歩もできない状態が続きます。
飼い主さんは、たくさん悩んだ末に自分が最善と思える治療法を選択しました。心臓手術を人工心肺を使用して、心臓を止めた状態で傷んだ弁を治す大手術を選択しました。
しかも悪性リンパ腫の再発の心配もある犬さんです。悪性リンパ腫は骨髄移植ができない獣医医療では必ず再発して亡くなってしまう病気です。
本当に悩んだ末の覚悟を決めた選択だったと思います。当院では、その気持ちと覚悟にこたえるために日本で最高の心臓病外科専門病院を紹介し、カルテとレントゲンと超音波検査結果を持参されて東京まで行かれました。
そこで更なる精密検査を行い、手術可能と診断され、開胸手術を行いました。
無事手術は成功し、術後の経過もよく退院して当院に来てくれました。
それから、お守り代わりの1種類の薬を飲むだけで、元気になったキャバリアさんは全力で走り回り、ソファーやベッドに飛びあがり部屋の中も走り回るそうです。好きなものを食べ薬も一種類、安静もなく元気に走り回れる数年前では夢のような変化です。
悪性リンパ腫の再発もなく、本日来院されました。
悪性リンパ腫と診断され、脾臓摘出術と輸血を行い救命してから4年!
抗がん剤投与を終了してから、4年半!
人工心肺で心臓を止めて、開胸手術を受け心臓を開いて弁の修復手術を受けてから1年!
好きなものを食べ、好きなだけ走り回り、薬はお守り代わりの1種類だけの15歳のキャバリアさん。とても15歳には見えません。
飼い主の愛情と覚悟と、自分の意志で考え判断し決断した選択とそれに懸命に答えて頑張った犬さんの生命力。この二つが世界最高の生存日数を達成したと思います。本当に頭が下がります。
予防医療を完全に行い、避妊去勢手術を受け、年2回~1回の健康診断やがんドックをきちんと行い、決められた投薬をしっかりと行い、治療法を飼い主自身が自分の責任と覚悟を持って、世界標準の獣医学や獣医師・認定医・専門医を信じて、今自分自身ができる最善のことをしてあげようと決心したことが、この様な奇跡を起こしたのでしょう。一番大切なことは、最高の医療を行うことではありません。飼い主が自分自身で考え、覚悟を決め、結果のすべてを受け止める決意を固め、そして行動することです。結果を人のせいにせず、ひたすら動物の幸せを考え、自分が動物の立場ならどうしてほしいかをしっかり考えることこそが最も大切で必要な飼い主の態度だと思います。そのことを尻尾を振って幸せそうに飼い主と一緒に仲良く帰っていく犬さんと、飼い主さんの誇らしげな後姿が証明してくれました。