重症熱性血小板減少症(SFTS)最新情報

  春が過ぎて夏が近づいている季節になりました。野外に多く出る機会が大幅に増える季節です。

世間では、新型コロナのことばかりマスコミは取り上げていますが、日本では新型コロナの死亡率は極めて低く感染力は高いが致死率の低いウイルス伝染病というのが現状わかっていることです。しかも犬にも猫にも伝染するが発症した報告もなく動物から人間に伝染することも現時点ではありません。ワクチンも多数開発され、治療薬や治療法も確立されつつあります。

ところがメデイアが報道しないもっと恐ろしい伝染病が日本全国に広がっている現実をご存じでしょうか?

マダニという昆虫が媒介し、人間にも犬にも猫にもすべての哺乳類に感染し(野生動物)、人間にも感染するウイルスの人獣共通感染症の「SFTS=重症熱性血小板減少症」です。

致死率がなんと「人間で20%以上(5人に1人以上が死亡します)・犬で40%・猫で70%」というとてつもない高い死亡率のウイルス性人獣共通感染症が西日本から北へ日本全土に徐々に広がってきています。

人間は、昨年だけで109人で最多を記録し、毎年同じくらいの感染者が出ています。

猫は、449頭が感染、犬は、24頭が感染しています。野生動物も感染動物が増大し、それとともに人間や犬猫の感染も増加しています。

獣医療関係者の感染は、7人に上ります。

このウイルスはマダニから直接動物や人間に感染するだけでなく、飼っている犬や猫から人間に簡単に感染して発症する、新型コロナに比べ物にならないくらい警戒すべき伝染病です。

この「重症熱性血小板減少症」(SFTS)は、名前のように必ず重症化し入院点滴になり、高熱が出て、血を止める血小板が減っていき出血が止まらなくなる症状を起こし、嘔吐・下痢・血便、黄疸も起こします。しかもワクチンも予防薬も治療薬も治療法も全く分かっていない、未知のウイルス性熱性出血熱であり、2週間以内に発症します。.

発症したら、犬も猫も人間も入院・隔離・静脈内点滴による集中治療と精密検査・PCR検査等で確定診断を付けます。確定診断に1週間くらいかかります(動物の場合)。

隔離室で専門スタッフ医師(獣医師)と看護師(動物看護師)が使い捨ての医療用防護ガウンを着て、防護マスク・防護ゴーグル・防護キャップ・2重にした防護手袋・防護シューズカバーをして、特殊な消毒剤で完全消毒しながら院内感染や他のスタッフや飼い主さんそして何よりも自分自身が感染しないように静脈内点滴を行い、レントゲン・超音波検査・血液検査・尿検査・便検査・マダニ媒介疾患PCR検査とSFTSのPCR検査用に採血を行い検査センターに送ります。重傷で入院していますから、血液型も調べ輸血に備えます。

抗生物質や制吐剤・粘膜保護剤・血小板増加遺伝子組み換え製剤・動物用遺伝子組み換えインターフェロン・静脈内栄養ビタミンミネラル投与法や経腸栄養法を行います。それでも一日で死亡することもあります。これらの防護セットは毎回捨てて新しいのに交換して治療検査をしていきます。毎日の検査・治療が行われます。最終的には輸血が行われます。SFTSと確定診断されたら厚生労働省と獣医師会に報告しなければなりませんし、よりいっそう防護と完全消毒に厳密に取り組みます。膨大な手間と費用が掛かる命がけの仕事です。

記事に書いてあるように、そのように厳重に新型コロナ以上の防護をしたにも関わらず、検査・治療に携わった獣医師が結膜から動物の身震いで飛沫が飛んで感染することが容易に起きる大変な伝染力の感染症です。

新型コロナの致死率は日本では数パーセント以下ですから、比較にならない致死的伝染病です。

西日本を中心に全国に広がっており、長野県の隣の県まで迫っています。静岡でも発生が確認されています。また調査ではまだ長野県では人間や動物の感染発症はまだ報告されていませんが、長野県のマダニはすべてSFTSのウイルスに感染していることが確認されています。ですから文字どうり長野県で発生するのは時間の問題といえます。

これらの現状を受けて、厚生労働省から数回にわたって獣医師会と全国の動物病院に通達がありました。「飼われているすべての犬とたとえわずかでも庭に出ることがある猫は、100%マダニ予防を徹底するように飼い主さんを指導するようにとの内容です」。

予防薬は飲み薬タイプと背中にポトリと落とすだけのスポットタイプの2種類があって、1か月ごとと3か月ごとの2種類があります。動物病院で選んで購入してください。マダニは年間生存していますから、「理想は年間予防」です。

そして猫はどんなことがあっても外へ出さない室内外の徹底が一番重要です。飼い主さんが室内に知らないうちに持ち込まない限り、完全室内の猫やフェレットはマダニ予防薬は必要ありません。

犬は外から帰ってきたら、必ず全身をチェックしてマダニがいないかどうか必ず確認してください。

犬猫や野生動物の、血液・排泄物・涙・唾液もウイルスを含んでいます。したがって犬猫さんの体調が悪いときはなるべく触らない、道端や山で野原で倒れていたり死んでいる動物や野生動物には絶対に触らないことが重要です。特に野生動物はびっしりマダニが寄生しているので決して触らないでください。弱って捕まえることができた野良猫はまずマダニに感染した可能性が高く、捕まえられる野良猫はほぼ重症であり、SFTSの可能性も高いと考えてください。素手で救護すrことは極めて危険なので今までのように野良猫を助けるために抱いて動物病院に連れていくことはSFTSのリスクを覚悟して感染するかもしれないと考えて行動してください。

マダニの感染予防期間は理想は年間ですが、最低でも3月上旬からマダニをとってくれと飼い主さんがたくさん来ますから、「3月初旬から10月初旬までの最低10か月間は予防」してください。そして人間のほうは、山や芝生や林・草むらに行くときは必ず長袖長ズボンと軍手で行くようにしてください。マダニに刺されたら絶対に触ったり取ろうとせずに(ウイルスに伝染します!)、すぐに病院に行き、皮膚の下に頭が潜り込んで見えないマダニの頭ごと摘出してもらってください。そしてSFTSのことを医師からよく聞いて、潜伏期間2週間は体調の変化に気を付けてください。

そして、マダニは吸血する前は数ミリしか無くて見えません。それが枝や葉や草の先端で待ち構えています。動物には吸血しやすい場所である、目、唇、耳、顔、背中、腹部、肛門、陰部に感染し、吸血すると1センチ以上に巨大化します。

絶対に触ったり取ろうとしないでください!皮膚の下深くに頭を差し込んで吸血していますから引っ張るとマダニの腹部にいるSFTSウイルスを体内に入れてしまうことになります。

頭だけが皮膚の中に残って、しこりになり化膿したり炎症が起きたりしこりとしてずっと残ったりするので炭酸レーザーメスで局所麻酔下で摘出しなくてはならなくなります。マダニ専用の特別なピンセットが開発されており、これでうまくとれば頭ごと取れますからマダニに寄生されたらすぐ動物病院に行って取ってもらってください。そして同じようにSFTSの説明を聞いて潜伏期間の2週間は犬猫さんの体調の変化に十分に気を付けて少しでもおかしかったら絶対に様子を見ないですぐに動物病院の診察を受けてください。

全国紙の大新聞社が初めて大きく写真と図入りで真剣に報道してくれました。さらにその1週間後、マダニから人間に伝染するたくさんの命にかかわるSFTS以外の多くの病気の特集を、また大きく出しています。ようやくメデイアも事の重大性に気が付いてくれたみたいです。

テレビでもときどきこのSFTSの特集を組んで報道を始めています。そのほかのメデイアはまったく情報を発信していません。

日本国民はこの新型コロナよりもはるかに恐ろしい病気のことを全く知らずに、これから行楽シーズンで、新型コロナで何年も我慢してきたのですから、どんどん野に山に草原に、そしてキャンプや登山に出掛けると思います。服装も軽装ですから腕と足と手を出した格好で出かけます。犬さんもマダニ予防もせずに出かけ、マダニに刺されて飼い主に手で取られてウイルスが飼い主に感染し、犬さんに感染し、皮膚の下に残ったダニの頭は膨らんでいき化膿していきます。

長野県でSFTSが発生する前に、県民にこの伝染病のことを正しく情報を伝えなければならないときだと思います。

新型コロナで日本人や世界中の人間が学んだように、科学的に正しい情報を受け取り、正しく怖がり、正しく予防に努めることが何よりも大切なことだと思います。

もうこれからの時代は野良猫に安易に食事をやってそのままという行為は社会に受け入れられないものとなるでしょう。

保健所の方もSFTSの恐ろしさを十分に勉強していただいて仕事に気を付けて向き合ってください。

時代は大きく変わりました。人類を脅かす伝染病の驚異がどんどん増えてくる時代に突入しました。

命にかかわる致死率の非常に高い人獣共通感染症としてのSFTSのリスクを考えると、これまでのように野生動物や野良猫の診察はできなくなると考えられます。野良猫や、犬猫の捕獲や譲渡行為も、これまでのようには何もせずに行うことはできなくなると思います。

新型コロナが世界を根底から変えたように、SFTSの存在と拡大は、人と動物のかかわりのありようを根本的に変えていくと思います。

 

 

お問い合わせCONTACT

些細なことでもご不明な点などございましたら、
お気軽にお問い合わせください。

岡谷動物病院

TEL / 0266-23-0058

ご予約はこちらRESERVATION

再診・初診受付サービス

※外部サイトへ移動します