重症熱性血小板減少症(SFTS)の最新情報2020年12月。

近年、COVID-19=新型コロナ感染症の流行により、人々の間に{人獣感染症」への関心が高まってきました。

①人における発生状況:2020年5月27日時点では、517人の患者が報告されています。

そのうちの70人が死亡しています。届け出時点の感染年齢中央値は75歳であり、死亡率は50歳以上で上昇しています。

発生は、マダニの発生時期と並行して、春から秋にかけて多い傾向がありますが冬季にも報告があり、年間を通しての感染が確認されています。

②感染経路:主としてはマダニの刺咬と考えられていますが、感染者の体液からの感染や、伴侶動物から人への感染も報告されています。SFTSウイルスは多くの動物種に感染することが知られており、シカ・イノシシ・アライグマ・タヌキからは高率に抗体が検出されています。野生動物の抗体保有率と人間の患者数には正の相関性が見られていることから、野生環境におけるウイルスの蔓延が人への感染リスクを高めています。

③犬猫における発生状況:感染動物は多くの場合症状を出さない不顕性感染と思われてきましたが、犬猫においても発症し致死的な経過を取ることがわかってきました。致死率は犬で30%、猫では70%とネコ科の動物は異常に死亡率が高いことがわかってきました。2020年7月31日現在で、犬12例、猫269例の症例が報告されています。

④猫における臨床症状:元気・食欲低下が100%、黄疸が100%、嘔吐が50%と高率にみられる症状です。その他身体検査所見として、39度以上の発熱は多くの症例で認められています。血液検査で特徴的なのは、白血球減少症と血小板減少症が見られます。

犬猫の症状は全て重症で入院点滴による集中管理が必要な状態であることも特徴です。

⑤獣医師が診断するためには、SFTSの抗体価を調べるだけではなく、同じような病態を示すほかの病気である、猫汎血球減少症・猫白血病ウイルス感染症・猫エイズウイルス感染症・急性リンパ腫・免疫介在性疾患・中毒などが鑑別診断リストに入ってきます。これらの病気でないことを否定して、抗体価と総合して確定診断しなければなりません。

特に、猫でワクチンを打っていない個体は、臨床相がSFTSと同じだが抗体検査で陰性であるが、猫パルボウイルス遺伝子が10%で検出されています。猫のパルボウイルスのワクチンを打っていない猫は、どちらの検査もする必要が必須であるというます。

その意味でも、猫を飼っている人は、必ず猫エイズと猫白血病感染をしていないかを動物病院で早期に調べて、各地綱ワクチン接種をしなければならないことを意味しています。これからは、猫を飼う飼い主は100%室内飼育であっても、猫エイズとねこ白血病の検査・確実なワクチン接種・フィラリア症予防・少しでも庭に出る猫は年間を通したマダニ予防そして年1回の健康診断と検査が必須となります。猫を飼う人の義務といえるでしょう。

⑥SFTSの予防法と治療法:ヒト・動物ともに未だに予防ワクチンもなく、治療法もありません。入院による静脈内点滴と強力な支持療法しかありません。そのため、マダニの刺咬の回避・原因不明の病気の犬猫には直接触れないようにすることが極めて重要になります。

特に病気の犬や猫に接触する機会の多い動物病院のスタッフ(獣医師・動物看護師等)は感染リスクが特に高く2017年以降、診療した獣医師・動物看護師での感染が複数報告されています。

飼い主・動物病院スタッフの命を守るため、病院内の感染防御策の徹底は極めて重要です。SFTSウイルスは、感染動物の血液・体液(涙や唾液)・排泄物(尿や糞便)・嘔吐物に高濃度に含まれます。そのため、感染動物や疑わしい動物の診察・入院においては、個人防御(使い捨てデイスポマスク・ゴーグル・キャップ・グローブ(2重)・ガウン)の完全商着による飛沫対策+完全な消毒+十分な手洗い消毒が必須であるばかりでなく、人間の医療現場ではありえない、「咬傷」「ひっかき傷」にも十分注意しなければなりません。

SFTSの発症犬猫の人への感染状況:2017年―2020年6月まで。

発症猫から感染した獣医師(重症例も含む)4名・動物看護師1名。

発症猫から感染した飼い主4名(1名死亡)。

感染犬から感染した飼い主:1名。

 

また、病気を媒介するマダニ刺咬の回避も重要となります。回避策としては、犬猫のマダニ駆除剤の投与があげられます。

しかし、定期的な投与をしていた犬においても発症は認められており100%完全に痂疲できるわけではありません。

しかし、適切なマダニ予防剤投与は、吸血・接触機会を明らかに低減することができます。従って、犬と少しでも外に繰猫と特に野良猫への1年を通した積極的な駆除剤投与が推奨されます。

 

⑦おわりに:近年、動物から人に感染する新たな感染症は私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。SFTSは、国内での発生から7年が経過していますが、いまだ解明されていないことは多く、今後の新しい知見が期待されます。同時に、ワクチンの開発・治療薬の開発も急がれる重要な課題です。最新情報を常に発信し学び、かいぬしさんと動物病院で共有する情報が極めて重要になってきます。

 

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